数年前、名古屋で、複数の歯科医院のスタッフが一緒に学ぶ「姿勢マスター講座」を開催しました。

参加したのは、3つの歯科医院で働く4名のスタッフ。

歯科衛生士、管理栄養士、歯科助手、エデュケーターなど、それぞれ異なる立場で子どもたちに関わっている方々でした。

月2回、2か月間。
全4回の少人数講座です。

この講座で大切にしていたのは、

子どもの姿勢を学ぶ前に、まず自分自身の身体で体験すること。

姿勢についての知識を覚え、子どもにそのまま教えるのではありません。

自分の足が床に触れている感覚。

無理に胸を張らなくても、身体が自然に起きてくる感覚。

座り方や立ち方が変わることで、身体の楽さが変わる体験。

まず、それを自分の身体で知る。

その体験があって、初めて子どもの身体を見る視点や、子どもへ伝える言葉が生まれると考えていたからです。

最初に変わったのは、スタッフ自身の身体でした

講座を終えた4名が、とても丁寧な感想を書いてくださいました。

その中で共通していたのは、子どもの姿勢を見る前に、まず自分自身の身体に変化が起きていたことでした。

ある方は、いつも感じていた頭痛や目の疲れが和らぎ、以前より疲れにくくなったと書いています。

立っているときや座っているときに、足の指がきちんと床についているかを意識するようになり、最初は意識しなければできなかったことが、次第に自然にできるようになったそうです。

また、巻き肩に悩み、胸を開こうとするとかえって苦しくなっていた方は、講座の中で行ったシンプルなワークによって、

「頑張らなくても胸が開くようになりました」

と書いてくださいました。

身体を正しい形へ無理に動かすのではなく、自分の身体の中で何が起きているのかを感じながら動いてみる。

その違いを、身体で実感されたのだと思います。

別の方は、講座を受けて初めて、

「重力を感じたり、足裏がペタッとつく感覚を感じました」

と書いています。

姿勢を見るとき、外から見える形ばかりに目が向きがちです。

けれど、身体を支えている足裏の感覚や、身体の重さがどこへ落ちているのかに気づくと、立ち方や座り方の見え方も変わってきます。

さらに、自分の腰が丸くなりやすいことや、目に力が入っていることなど、それまで気づかなかった自分自身の癖にも気づくようになったそうです。

自分で分かったことが、子どもを見る視点になる

自分の身体を体験すると、人の姿勢の見え方も変わります。

それまでは、子どもの姿勢を見ても、

「姿勢が悪い」

と大きく捉えるだけだったものが、

足が床についていない。

腰が反っている。

座面の高さが合っていない。

身体の一部に力が入り続けている。

というように、身体のどこで何が起きているのかを、少しずつ見分けられるようになります。

感想の中には、

「日頃から人の姿勢が目につくようになりました」

「子どもの座り方のどこが良くないのかに気づくようになりました」

「ただ“悪い姿勢”と思っていた姿勢にも、種類があることが分かりました」

という言葉がありました。

姿勢を良い、悪いだけで判断するのではなく、

なぜ、この座り方になっているのだろう。

身体のどこが頑張っているのだろう。

と、その姿勢の背景を考える視点が育っていったのだと思います。

体験したことだから、子どもへ伝えられる

歯科医院で子どもたちに関わるスタッフから、よく聞いていたのが、

「姿勢が大切なのは分かるけれど、子どもにどう伝えればよいか分からない」

という悩みでした。

言葉だけで「背筋を伸ばして」「まっすぐ座って」と伝えても、子どもが自分の身体で理解できなければ、その姿勢は長く続きません。

今回の受講者の中にも、講座を受ける前は、

「教える側がふわふわしていて、自信を持って伝えられなかった」

という方がいました。

講座を受けた後には、

「子どもの姿勢指導を具体的に何をしたらよいかが分かったので、手軽に取り組めるようになりました」

「自分が感じたり、できたことを子どもに教えられるのが、ほかのセミナーとの違いだと感じました」

と書いています。

自分の身体で分かったことだから、子どもにも伝えられる。

自分が変化を感じた方法だから、子どもの反応を見ながら試すことができる。

知識を渡すのではなく、子ども自身が身体で分かる体験をつくる。

そのためにも、最初にスタッフ自身が体験していることが大切なのです。

他院のスタッフと一緒に学ぶことで生まれたもの

この講座は、1つの歯科医院の院内で行ったものではありません。

3つの歯科医院から集まったスタッフが、一緒に学びました。

最初は、他院の人と学ぶことに緊張した方もいたようです。

けれど回を重ねるうちに、それぞれの医院での悩みや取り組みを話し、互いの経験を聞く時間が生まれていきました。

感想には、

「他の受講生の話を聞く時間がしっかりあったので、全員で参加しているという感じが良かったです」

「他の医院の方とも情報を共有できて、良い時間になりました」

「他の医院のお話や取り組みについても聞けるので面白いです」

と書かれていました。

同じ医院の中にいると、いつの間にか当たり前になっていることがあります。

ほかの医院で働く人の話を聞くことで、

「そんな見方もあるのか」

「自分の医院では、どうしているだろう」

と、自分たちの現場を少し離れたところから見直すことができます。

少人数だったからこそ、分からないことをその場で質問し、自分が正しくできているかを一つずつ確かめることもできました。

講座の初めには、そのとき困っていることや疑問を、一人ずつ聞く時間を設けていました。

そのことについて、

「親身になって話を聞いてくださり、アドバイスをしてくださったのがとても良かったです」

という感想もいただきました。

身体について学ぶだけではなく、自分の仕事の中で感じていることを安心して話せる。

その空気も、この講座の大切な一部だったのだと思います。

当時から変わらないこと

この講座を開催した当時は、現在よりも身体について多くの情報を伝えていました。

一人ひとりの身体には、さまざまなことが起きています。

それをできるだけ伝えたいと思うほど、講座の情報量も増えていきました。

受講中には身体の変化を感じられても、歯科医院へ戻ったあと、

どれを、どの子に、どの順番で行えばよいのか。

現場で実践するには、難しい部分もあったと思います。

その後、歯科医院の現場で本当に使いやすい形を探り続け、現在は、たくさんのことを伝えるのではなく、スタッフが自分の身体で確かめ、子どもの反応を見ながら実践できる内容へと整理してきました。

子どもの姿勢を変えようとするのではなく、その子の反応を見ながら関わることも、以前より大切にするようになりました。

講座の内容や伝え方は、経験を重ねる中で変わってきました。

けれど、変わっていないことがあります。

子どもに伝える前に、まずスタッフ自身が自分の身体で体験すること。

そして、

自分の身体で分かったことを、子どもを見る視点と、子どもへ伝える言葉につなげていくこと。

4名が残してくれた感想を読み返すと、今の講座へつながるこの順番は、あの頃から変わっていなかったのだと、あらためて思います。

歯科医院の院長先生へ

子どもの姿勢についてスタッフへ伝えても、院内での実践につながらない。

スタッフによって、子どもの身体の見方や伝え方が違っている。

そんなことを感じていませんか。

子どもに伝える前に、まずスタッフ自身が自分の身体で体験する。

その共通体験が、子どもを見る視点や伝える言葉を、院内で育てていきます。

姿勢を入り口にしたスタッフ教育について、現在の院内での取り組みや、感じていることを伺う無料Zoom個別相談を行っています。

どうぞ、まだ考えがまとまっていない段階でもお話しください。

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