私は、姿勢についてなら、いくらでも話すことができます。
立ち方。
座り方。
足の裏。
呼吸。
身体の上下の方向。
重力との関係。
舌の位置。
口腔育成とのつながり。
これまで長く身体に関わり、子どもの姿勢を見続け、歯科医院でも講座を行ってきました。
姿勢についての知識が足りないから、神経系や身体感覚、医院文化の話まで広げているのではありません。
むしろ、姿勢について伝え、実際に歯科医院の現場へ入ってきたからこそ、
姿勢だけを伝えても、歯科医院の現場ではうまく機能しないことがある
と分かったのです。
これは、私がこれまでやってきた結果として、今だから話せることです。
姿勢の知識を伝えるだけなら、講座はつくれる
子どもの姿勢を見るときに、知っておきたい身体の仕組みはたくさんあります。
足が床についているか。
骨盤はどのように支えられているか。
背中や首に力が入りすぎていないか。
呼吸はどこに入っているか。
身体の中に、上と下の方向が感じられているか。
姿勢と口腔育成が、どのようにつながっているのか。
こうした知識や見方をまとめれば、姿勢の講座をつくることはできます。
体操やワークを伝えることもできます。
実際、私自身も、以前は今よりも「姿勢そのもの」を中心に伝えていました。
その時々で必要だと思ったことを、真剣に伝えてきました。
けれども、歯科医院の現場で実際に子どもたちを見ていると、知識だけでは届かない場面がありました。
姿勢を見る前に、身体が守ろうとしていることがある
歯科医院には、さまざまな状態の子どもが来ます。
待合室で落ち着かない。
診療台に座れない。
身体を固くする。
呼吸を止める。
口を開けられない。
泣く。
逃げようとする。
そのような状態の子どもに、姿勢の話だけをしても届かないことがあります。
足を床につけましょう。
背中を起こしましょう。
力を抜きましょう。
呼吸をしましょう。
大人から見れば、どれも間違った言葉ではありません。
けれども、その子の身体がすでに、
「怖い」
「何をされるか分からない」
「ここから離れたい」
と感じ、自分を守ろうとしているとしたらどうでしょう。
そのときの子どもに必要なのは、正しい姿勢を教えられることより先に、
自分の身体が無視されないこと
なのかもしれません。
泣くことも、固まることも、動き回ることも、口を閉じることも、神経系の防御反応として理解することができます。
そう考えると、姿勢は単に身体の形だけを見ればよいものではないと分かってきます。
姿勢は、その子の状態として現れている
姿勢は、形として見えます。
けれども、その形の奥には、その子の状態があります。
不安。
緊張。
疲れ。
呼吸のしづらさ。
身体の支えにくさ。
周囲への警戒。
そして、安心できているかどうか。
同じように背中を丸めている子どもでも、起きていることは一人ひとり違います。
椅子が高く、足がつかないために身体を支えにくいのかもしれません。
診療室の音や光に緊張しているのかもしれません。
何をされるか分からず、身体を小さくしているのかもしれません。
夢中になりすぎて、呼吸を止めているのかもしれません。
だから、姿勢を「いい・悪い」だけで見ても、その子の身体を見たことにはなりません。
必要なのは、
この子の身体に、いま何が起きているのだろう
と考える視点です。
歯科医院が姿勢を見るゴールは、どこにあるのか
歯科医院で姿勢への取り組みを始めると、いつの間にか「正しい姿勢をつくること」がゴールになってしまうことがあります。
背中をまっすぐにする。
耳、肩、骨盤の位置をそろえる。
決められた体操を続ける。
けれども、見た目としての正しい姿勢を追いかけ続けると、
「いったい、どこまでできればよいのだろう」
「歯科医院として、何を目指しているのだろう」
と、ゴールが見えなくなることがあります。
歯科医院が姿勢を見る目的は、見た目としての「正しい姿勢」を完成させることではありません。
歯科に必要な姿勢とは、口腔育成をサポートする姿勢です。
呼吸がしやすいこと。
舌が働きやすいこと。
顎や口腔の育成を、身体全体から支えられること。
子どもが過度に緊張せず、自分の身体を感じられること。
そのような身体の状態を見るために、歯科医院が姿勢を見る意味があります。
だからこそ、姿勢の形だけではなく、呼吸、身体の支え、緊張、身体感覚、そして神経系の状態まで見る必要があるのです。
方法を増やすだけでは、現場には定着しない
歯科医院で姿勢に取り組もうとすると、
「どんな体操をすればいいですか」
「何回やればいいですか」
「どのように声をかければいいですか」
という質問がよく出てきます。
もちろん、具体的な方法は必要です。
けれども、方法だけを増やしても、それだけでは現場に定着しないことがあります。
担当するスタッフによって、子どもの見方が違う。
声のかけ方が違う。
体操をすること自体が目的になってしまう。
なぜそれをするのかが、スタッフ間で共有されていない。
忙しくなると続かなくなる。
こうしたことは、誰かの努力不足で起こるのではありません。
医院の中に、身体を見る共通の視点がまだ育っていないだけです。
だから私は、姿勢の知識や体操を伝えるだけでなく、スタッフ自身に身体を体験してもらうことを大切にするようになりました。
自分の足が床についたとき、身体はどう変わるのか。
呼吸をしたとき、足裏の感じはどう変わるのか。
力を抜こうとするよりも、支えられたときに自然に力が抜けるとはどういうことか。
身体が安心しているときと、警戒しているときでは、何が違うのか。
自分の身体で体験したことは、知識とは違う形で残ります。
そして、その体験があるからこそ、目の前の子どもを違う目で見られるようになります。
姿勢から、関わり方へ
姿勢を見る視点が深まると、自然に関わり方も変わっていきます。
子どもの背中が丸いときに、すぐに起こそうとしない。
足がついていないことに気づく。
身体を固めているときに、言葉を増やしすぎない。
近づく速さを少しゆるめる。
子どもの視界に入ってから声をかける。
背中や足が支えられるようにする。
一度、手を止める。
子どもが選べることがあるなら、選んでもらう。
これは、「子どもを優しく扱いましょう」という話だけではありません。
子どもの身体や神経系に何が起きているのかを理解したうえで、関わり方を考えるということです。
姿勢を扱おうとしたら、身体感覚の話が必要になりました。
身体感覚を扱おうとしたら、神経系の話が必要になりました。
神経系を理解しようとしたら、子どもへの関わり方が必要になりました。
関わり方を医院の中に残そうとしたら、スタッフ教育と医院文化が必要になりました。
私の講座の内容が広がってきたように見えるのは、話を大きくしたかったからではありません。
歯科医院で、口腔育成を支える子どもの身体を本当に見ようとした結果、必要なところまで進んできたのです。
一人の技術ではなく、医院の共通体験へ
経験豊富なスタッフが一人いて、その人だけが子どもの状態をよく見られる。
それも、とても大切なことです。
けれども、その人がいないときには、同じ関わりが続かないかもしれません。
子どもへの関わりを、誰か一人の感覚や頑張りだけにしないためには、医院全体で共有する必要があります。
ただし、共有するのは、決まった声かけの文言だけではありません。
子どもの姿勢。
呼吸。
表情。
視線。
足の支え。
身体の緊張。
神経系の防御反応。
そして、自分自身が子どもの前で、どのような身体になっているのか。
こうしたことを、スタッフが自分の身体で体験しながら学ぶ。
その共通体験が、共通言語になります。
そして、共通言語が積み重なることで、少しずつ医院の文化になっていきます。
私が目指しているのは、姿勢を上手に指導できるスタッフを増やすことだけではありません。
子どもを「正しい・間違い」で評価するのではなく、
この子の身体には、いま何が起きているのだろう
と、医院全体で考えられること。
そして、その視点を、呼吸や舌の働き、顎や口腔の育成を支えることへつなげていくことです。
その視点が、治療の場面にも、保護者への説明にも、待合室での見守りにも生きていきます。
コドモの姿勢®LABOとして、今伝えたいこと
コドモの姿勢®LABOは、姿勢の直し方を教えるためだけの場所ではありません。
姿勢を入り口に、子どもの身体をどう見るかを探究してきた場所です。
私自身、最初から今の考え方を持っていたわけではありません。
子どもの姿勢を見て、講座を行い、歯科医院の現場に入り、院長やスタッフから出てくる問いに向き合ってきました。
うまく届かなかったこともありました。
方法だけでは続かなかったこともありました。
伝えたことが、現場で別の形になってしまうこともありました。
そのたびに、
「なぜだろう」
「何が足りないのだろう」
と考えてきました。
その結果として、今は、姿勢だけでなく、身体感覚、神経系、関わり方、スタッフ教育、医院文化まで伝えています。
これは、姿勢から離れたのではありません。
姿勢を本当に大切にしようとしたからこそ、姿勢の奥にあるものまで見るようになったのです。
そして、最後に戻ってくるのは、やはり歯科医院が姿勢を見る目的です。
歯科医院が目指すのは、見た目としての正しい姿勢をつくることではありません。
歯科に必要な姿勢とは、口腔育成をサポートする姿勢です。
呼吸や舌の働き、顎や口腔の育成が、身体全体から支えられていること。
そのために、子どもの身体の形だけではなく、支え、呼吸、緊張、身体感覚、神経系の状態まで見る。
歯科医院が姿勢を見る意味は、そこにあると考えています。
歯科医院が、子どもの姿勢を直す場所になる必要はありません。
子どもの身体を、外側からコントロールする場所になる必要もありません。
子ども自身が、
「足がついている」
「さっきより呼吸しやすい」
「この方が楽かもしれない」
「ここなら少し大丈夫かもしれない」
と、自分の身体で感じること。
そして、その経験を医院全体で支えられること。
口腔育成を支えながら、子どもが安心して自分の身体を感じられる文化を、歯科医院の中に育てていく。
今、コドモの姿勢®LABOとして伝えたいのは、そのことです。
歯科医院の院長先生へ
姿勢への取り組みを始めたものの、
体操を続けることが目的になっている。
正しい姿勢に捉われすぎて、何をゴールにすればよいのか分からない。
スタッフによって、子どもの姿勢の見方が違う。
保護者への説明が統一されていない。
姿勢と口腔育成のつながりを、院内で共有しきれていない。
そのように感じることはありませんか。
歯科医院で必要なのは、見た目としての「正しい姿勢」をつくることではありません。
呼吸しやすいこと。
舌が働きやすいこと。
顎や口腔の育成を、身体全体から支えられること。
つまり、歯科に必要な姿勢とは、口腔育成をサポートする姿勢です。
姿勢を入り口に、子どもの身体、呼吸、神経系、関わり方を見る視点を、スタッフの共通体験として育てる講座を行っています。
現在の取り組みや、院内で感じていることが、まだ整理されていなくても大丈夫です。
まずは無料Zoom相談で、医院の状況を伺いながら一緒に整理していきます。


