先日、子どもの頃からの友人と話していた時のことです。
彼女は歯科医院で働く、あるスタッフの話をしてくれました。
その方がロルフィングを受けに来られたのは、コロナ禍より前のこと。
当時は、椅子から立ち上がる時にも、
「イタタタ……」
と声が出ていました。
立ち上がってから歩き始める時もつらそうで、院内を移動するたびに足を引きずるように歩いていたそうです。
働き者で、仕事を続けたい気持ちはある。
けれど、体のあちこちが痛く、思うように動けない。
そんな様子を見ていた友人が、私のロルフィングを紹介してくれました。
初めて体を見た時、どこか一か所だけの問題ではなく、全身のつながりの中でバランスが崩れているように感じました。
そこで、10回のセッションを通して、体全体のバランスを少しずつ整えていくことにしました。
毎回、1時間以上かけて通ってくださったことを覚えています。
セッションの中では、体を整えるだけではなく、家でもできる簡単なセルフケアや、日常の中で少し楽に動くためのコツもお伝えしました。
難しいことではありません。
「今、ここに力が入っているな」
「少し動きにくくなってきたな」
と気づいた時に、自分で少し戻すための、小さな方法です。
彼女は、伝えたことをきちんと続けていました。
そして次に来られるたびに、
「前より楽になりました」
「動きやすくなってきました」
と報告してくれました。
その言葉を聞くのが、私も嬉しかった。
10回のシリーズが終わってからは、セッションでお会いすることはなくなりました。
その後も私は時々、友人の歯科医院を訪れていました。
受付で顔を合わせると、いつもにっこり笑って、
「茂利せんせー!」
と声をかけてくれます。
元気そうな姿を見るだけでも、十分に嬉しく感じていました。
そして先日、友人から、その後の様子をあらためて聞いたのです。
今では、院内をさくさく歩いて働いている。
以前のように、立ち上がるたび、移動するたびに「イタタタ……」と言っていた姿とは、まるで違う。
さらに、以前よりずっと行動的になり、あちこちへ出かけているそうです。
長く一緒に働いてきた友人が、嬉しそうに、少し驚きながら教えてくれました。
私はその話を聞きながら、10回のセッションを受けていた頃の彼女を思い出していました。
椅子から立ち上がるだけでもつらかった人が、今はさくさく歩いて働いている。
ロルフィングを受けた直後に、
「楽になりました」
と聞けることも、もちろん嬉しい。
けれど、ロルフィングの変化は、10回のセッションが終わった時にすべてが完成するものではないと、私は感じています。
セッションを終えたあと、その体で日々を過ごしていく。
立ち上がる。
歩く。
働く。
出かける。
そうして新しい体の使い方を何度も重ねるうちに、セッションで生まれた変化が、少しずつその人自身の動きになっていきます。
そして、セッションの中で覚えたことも、暮らしの中に残っていくのだと思います。
「あ、少し力が入っているな」
「今日は、いつもより動きにくいな」
そう気づいた時に、誰かに整えてもらうのを待つのではなく、自分で少し戻してみる。
また力が入ることもある。
また動きにくくなる日もある。
けれど、そのたびに気づいて、自分で戻す。
気づいたら、自分で戻す。
その小さな行為を日常の中で重ねることが、結果として、体の調子を長く保つことにつながっているのかもしれません。
だから、終了した直後よりも、数年たってからの方が、その変化に気づくこともあります。
ある時、ふと振り返って、
「あれ? そういえば、私、痛みを感じていない」
「前より、さくさく動いている」
と気づく。
変わろうと意識し続けていたわけでもない。
毎日、自分の姿勢を正していたわけでもない。
いつの間にか、以前はつらかった動きが、日常の中で普通にできるようになっている。
私は、そこもロルフィングの魅力の一つだと思っています。
体が変わるというのは、痛みが減ることだけではありません。
立ち上がれる。
歩ける。
働ける。
行きたい場所へ出かけられる。
一つひとつは、日常の中にある何気ない動きです。
けれど、その何気ない動きがつらくなった時、人の暮らしは少しずつ狭くなっていきます。
反対に、体が動きやすくなると、暮らしの中に選べることが増えていく。
立ち上がる。
歩き出す。
仕事をする。
出かけてみる。
そんな日々の動きの積み重ねが、その人の人生をつくっています。
そして、この方がロルフィングを始めたのは、61歳の頃でした。
体を変えるのに、もう遅い年齢だったのでしょうか。
私は、そうは思いません。
何歳であっても、体は今の自分にできる変化を続けています。
若い頃と同じように変わるという意味ではありません。
けれど、今より楽に立ち上がること。
今より歩きやすくなること。
今より自分の体に気づけるようになること。
そうした変化に、年齢で線を引く必要はないと思っています。
椅子から立ち上がるたびに「イタタタ……」と言っていた人が、数年後には院内をさくさく歩いて働いている。
この姿は、
幾つになっても、体は変わることができる。
そのことを、静かに見せてくれているように思います。
ロルフィングがすべてを変えた、と言うつもりはありません。
遠い道のりを通い、家でできることを続け、その後も自分の体と暮らしてきたのは、ご本人です。
私は10回のセッションを通して、体全体がもう少しつながり、今より少し楽に動けるようにお手伝いをしました。
そして、自分の体に気づいた時に、自分でも少し戻せるような方法をお伝えしました。
その時に生まれた変化が、セッションの終了後も、毎日の暮らしの中でゆっくり育っていた。
「今では、さくさく歩いて働いているよ」
友人のその言葉を聞いて、私はとても嬉しくなりました。
私がロルフィングで増やしたいのは、整った体の形ではありません。
その人が、自分の体でできること。
気づいた時に、自分で戻せること。
そして、
自分の人生の中で、自由に動ける範囲。
本人にとっては、もうそれが当たり前の日常になっているのかもしれません。
数年たってから、ふと振り返った時に気づく変化。
その姿の中に、ロルフィングの後も続いていく、本当の変化があるように思います。
ロルフィングについて
ロルフィングの流れやセッション内容、料金などの基本的な情報は、ロルフィングのページでご紹介しています。
こちらのブログでは、ロルフィングで実際によく起こる体験や、体との関係づくりについて、一つひとつ言葉にしていきます。
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「自分の体を味方にして生きる」
という考え方に興味を持たれた方は、ぜひロルフィングのページもご覧ください。

